松原充久的ココロ

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おっぱいコーヒー 913

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おっぱいコーヒー 913
40年

祇園、1980年。
小さなバーで、20歳のケイコは働きだした。

街はまだ前を向いていた。
お金も、夢も、恋も、夜も、
これから膨らんでいくものだと誰もが信じていた。

1990年、ケイコ30歳。
バブルは弾け、
日本は一気に下り坂を覚えた。
それでも祇園の夜には灯りがあり、
グラスの氷はまだ明るく鳴っていた。

2000年、ケイコ40歳。
ミレニアム。
未来という言葉だけが派手で、
社会は静かに停滞していった。
それでもカウンターには常連が座り、
コーヒーの湯気だけは、いつも上にのぼった。

2010年、ケイコ50歳。
小さなバーは老舗になった。
一見客まで満員になり、
昔を知らない若い客が、
昔からそこにいたような顔で座る。

2021年、ケイコ61歳。
コロナウイルスで街は分断され、
人と人との距離は、
テーブルの幅よりずっと広くなった。

それでもケイコは店を開ける。
祇園の細い路地で、
40年分の夜を背負って、
静かにコーヒーを淹れる。

前向きだった時代も、
壊れた時代も、
止まった時代も、
離れてしまった時代も。

全部、カウンターの傷になった。

だから今夜も、
コーヒーを飲む。
日本の40年を、少し苦く。
少しだけ温かく。

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昭和から令和へ
コーヒーのある夜
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