松原充久的ココロ

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おっぱいコーヒー 896 東京タワーとケイコ

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おっぱいコーヒー 896 東京タワーとケイコ

1970年、二十歳のケイコは夜にデビューした。

東京タワーの灯りがまだ未来に見えた時代。
場末のバーのカウンターで、
グラスを磨き、煙草の煙を吸い、
男たちの景気のいい話と、
誰にも言えない寂しさを聞いていた。

高度成長、オイルショック、バブル、崩壊。
ネオンは明るくなったのに、
夜の顔は少しずつ暗くなっていく。

1980年代、街は浮かれていた。
タクシーは止まらず、
シャンパンは泡より先に値段が立ちのぼり、
誰もが自分だけは沈まないと思っていた。

1990年代、夢の後始末が始まった。
派手なスーツは古び、
常連客の声は小さくなり、
カウンターのコーヒーだけが、
変わらず湯気を立てていた。

2000年。
ミレニアムの夜、ケイコは50歳になった。
東京タワーはまだそこにあり、
場末のバーもまだ開いている。

時代は変わる。
男たちは入れ替わる。
流行も、景気も、嘘も、夢も消える。

それでも夜には、
誰かを黙って受け止める灯りが必要で、
その横には、少し苦いコーヒーがある。

ケイコの30年は、
東京の夜の30年だった。

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