松原充久的ココロ

私見

決済税と月10万円ベーシックインカムだけの日本 ─ 社会実験の全貌

もし日本が“すべての税金”を廃止し、決済に数%を課す“決済税”だけにしたら? そして全国民に月額 10 万円のベーシックインカム(BI)を支給したら? ── 2025 年時点の最新データを使って試算し、技術・法制度・政治プロセスまで徹底的に検証しました。その過程をブログ記事としてまとめます。


1. 発端:シンプル税制+BIという社会実験

  • 背景:複雑化する税制と増え続ける社会保障費。集めるコストも配るコストも肥大化。
  • 提案の骨子
    1. 所得税・法人税・消費税・社会保険料ほか、現行すべての税目を廃止。
    2. 取引発生時に自動で差し引く 決済税 (Transaction Tax) を唯一の財源に。
    3. 年金・生活保護・児童手当など現金給付はすべて一本化し、BI 月 10 万円を国民全員へ。

2. お金の計算:いくら必要で、税率は何%?

区分年間フロー (兆円)試算根拠ベーシックインカム147.61.23 億人 × 120 万円/年公的年金給付削減▲53.42023 年実績生活保護削減▲3.7厚労省統計防衛・教育・公共サービス等103FY2025 当初予算から年金助成等を除外した概算追加必要額約 90147.6 − (53.4+3.7) + 103

税基盤ごとの必要税率課税対象規模追加 90 兆円を賄う税率GDP (= 610 兆円)国内付加価値総額15 %デジタル円による決済総額 (≈ GDP×10 = 6,000 兆円)銀行振込・カード・証券決済等1.5 %

つまり「決済を100%デジタル化し、すべて捕捉できれば税率 1〜3% 台で回る」という構図。


3. 技術インフラ:デジタル円とスマートタックス

  1. CBDC(中央銀行デジタル通貨)“デジタル円”
    • 日本銀行が 2023~25 年にかけて実証中の小売 CBDC パイロットを全国展開。
  2. スマートタックス・レイヤー
    • 決済時に「送金額 × 税率」を即座に国庫アドレスへ自動分割するスマートコントラクトを全ウォレット/POS に組み込み。
  3. オフライン & 災害対応
    • 端末に一時保存した税額をオンライン復帰時にまとめて精算。
  4. 量子耐性・プライバシー保護
    • ゼロ知識証明 (ZKP) で取引内容を秘匿しつつ税額のみ公開。

4. 暗号資産逃避をどう防ぐ?

  • 電子決済手段 (EPI) の一本化:暗号資産・ステーブルコインを含むすべての「価値移転トークン」を PSA (資金決済法) 改正で EPI と定義し、スマート課税を義務化。
  • Travel Rule 無閾値化:1 円相当でも送金者・受取人情報を VASP 間で共有。
  • 未登録サービス遮断とブリッジ課税:海外ウォレット↔国内口座の資金移動時に源泉徴収し、KYC 照合。
  • プライバシーコイン/ミキサーの国内提供禁止

5. “本当にできるの?” 6つの障害

  1. 憲法・法体系:租税法律主義(84 条)と地方税固有財源の再設計。
  2. 財政構造:地方税 40 兆円・社会保険料 50 兆円の代替財源を決済税で賄えるか。
  3. 技術インフラ:全国 1 億人規模のデジタルウォレット普及+量子耐性セキュリティ。
  4. インフレ & 資本流出:BI による需要膨張、決済重課による取引海外流出。
  5. 社会・政治プロセス:高齢者の減収、官庁組織縮小、プライバシー懸念への合意形成。
  6. 国際調整:WTO/租税条約・インバウンド客決済の取り込み。

6. “年金・生活保護ゼロ、BI一本”がもたらす社会

項目期待される変化注意点所得分配相対的貧困率の大幅低下。若年層・地方移住が促進。高齢層は現行年金 > BI のため可処分所得が減少。段階導入か加算措置が鍵。行政コスト徴税・給付事務の大幅簡素化。地方自治体の財源構造を再設計。キャッシュレス化全決済をデジタル円化、現金廃止。デジタルデバイド対策、災害時バックアップ必須。インフレ管理税徴収が機械的で、金融政策が需要抑制の主役に。景気後退時に税収が急減する変動リスク。


7. ロードマップ案(最短10年)

フェーズ期間主要タスク実証拡大2025–27CBDC 全国パイロット、税 API 実装検証二重流通2028–30高額紙幣廃止上限、公共給付をデジタル円へ移行全面切替2031–33現金交換期限、決済税本格運用 & BI 給付開始最適化2034–税率微調整、プライバシー強化、国際連携


8. まとめ

  • 技術的には、BOJ デジタル円とスマート課税で実装可能。
  • 財政的には、決済総額をフル捕捉できれば 税率 1〜3% で BI+公共サービスが回る目論見。
  • 最大の壁は憲法 25 条(最低生活)と高齢層減収、そして地方税源の再設計。
  • 段階導入とセーフティ付き BI を併用しつつ、社会的合意と国際調整を進めれば「決済税+月 10 万円 BI」社会は 夢物語ではない

参考文献・データソース

  • 総務省統計局『人口推計(2025年4月速報)』
  • 日本銀行『CBDCパイロットプログラム進捗報告書』(2025年3月)
  • 厚生労働省『令和5年度 年金特別会計決算概要』
  • 財務省『令和7年度(2025)一般会計当初予算』
  • OECD Tax Database, 2024

この記事は 2025 年 4 月 26 日時点の公開情報と独自試算に基づき作成しました。ご意見・ご質問はコメント欄または info@example.com までお気軽にどうぞ。

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