松原充久的ココロ

私見

日本における男性フレグランスの歴代トレンド分析(ブランドと香り)

日本における男性用フレグランスの年次トレンド分析(1990〜2025年)

目次

はじめに

日本の男性用フレグランス市場は、1990年代から現在に至るまで独自の進化を遂げてきました。バブル崩壊後の1990年代には香りの嗜好が重厚なものから軽やかなものへ大転換し、2000年代には若者を中心にフレグランスへの関心が高まりましたameblo.jpfragrance.co.jp。2010年代以降は清潔感や爽やかさを重視した香りが主流となり、2020年代には個性表現やリラクゼーション志向の高まりとともに新たなトレンドも生まれていますwwdjapan.comkikao.jp。以下では、各年ごとの主要な流行や変化について、ブランド別人気動向と香調の傾向、さらに時代背景やメディア・マーケティングの影響を交えながら詳しく見ていきます。

1990年: エゴイスト旋風と80年代香水の名残

1990年、シャネルが世界発売した「エゴイスト」はサンダルウッド主体の濃厚なオリエンタル調で注目を集めましたkaori.air-marketing.co.jp。これは1980年代のパワフルでセクシーな香りの延長線上にありつつ、“媚びない男”の香りとして話題になりますkaori.air-marketing.co.jp。一方、日本では依然として男性が香水をつける習慣は一般的でなく、従来は「MG5」や「ブラバス」などアフターシェーブ的なローションが中心でした。しかしバブル期を経て男性もファッションの一部として香水に関心を寄せ始め、この年頃から徐々に欧米ブランド香水を試す動きが見られ始めました。

1991年: マリンノートの登場とライト志向への序章

1991年前後から、香りの傾向に変化の兆しが現れます。ケンゾーが発売した「ケンゾー プールオム」は潮風を感じさせる日本初期のマリンノート香水として登場し、水や海を思わせるオゾン系の香りが注目されましたameblo.jp。これは従来のスパイシーで重厚な男性香水とは一線を画し、日本でも「爽やかで軽い香り」への関心が高まるきっかけになります。バブル崩壊直後の癒しブームとも相まって、「香りは軽く」というトレンドがこの頃から芽生え始めましたameblo.jp。まだ男性用市場は小規模ながら、一部の洒落た男性たちがシトラスやマリン系のコロンを日常に取り入れ始めています。

1992年: 透明感の台頭と癒し系ブーム

1992年、日本人デザイナー三宅一生による「イッセイ ミヤケ ロードゥ イッセイ」が発売され、世界的に“水の香り”ブームを巻き起こしますameblo.jp(※同年はレディース版、メンズ版は1994年発売)。革新的な合成香料カロンを用いたこの香りはメロンやスイカのようなみずみずしい透明感を持ち、「マリン・オゾン系」の幕開けとなりましたameblo.jp。日本でも癒し志向の高まりを背景に、「せっけんの香り」や「グリーンティーの香り」といったユニセックスでリラックスできる香りが支持され始めますameblo.jpameblo.jp。この年、資生堂は自然志向の「リラクシングフレグランス」などを打ち出し、無香料ブームの反動で微香・癒し系の需要を捉えようとしましたfragrance.co.jp。まだ香水市場自体は小さいものの、男女問わず使える爽やかな香りが徐々に市民権を得ていきます。

1993年: 国産メンズ香水の挑戦とスパイシー回帰

1993年は日本の化粧品メーカー資生堂が男性向け本格香水「バサラ (BASALA)」を発売した年ですcosme.net。バサラはシトラスやラベンダーに始まり、タバコやウッディノートへと移行するスパイシー・シプレ系の香りで、重厚かつエキゾチックな男性像を打ち出しましたcosme.net。一方で海外では、シャネルが「エゴイスト プラチナム」を発表し、エゴイストに若々しい爽やかさを加えた香調が登場しますkaori.air-marketing.co.jp。このエゴイスト プラチナムは日本でも好まれたフレッシュ・フージェア系で、従来のエゴイストより軽快な印象が支持されましたkaori.air-marketing.co.jpkaori.air-marketing.co.jp。またジバンシィの「ウルトラマリン」(発売準備年)も店頭に姿を見せ始め、男性フレグランス市場にマリンノート旋風の兆しが見えます。総じて1993年は、国産ブランドの参入とライト系 vs. スパイシー系のせめぎ合いという過渡期であり、日本の男性も香水選びの幅が広がり始めた年といえます。

1994年: ユニセックス香水ブームの火付け役

1994年、カルバン・クラインが発売した「CK One」は男女の垣根を超えたユニセックス香水ブームの嚆矢となりました10plus1.jpameblo.jp。シトラスから始まる透明感ある香りは世界的に大ヒットし、日本の若者にも「ペアで使える香り」として受け入れられますameblo.jp。同年には三宅一生からメンズ版「ロードゥ イッセイ プールオム」が登場し、柑橘やスパイス、水生ノートを組み合わせた爽やかで個性的な香りが男性にも浸透しました。さらにジバンシィの「ウルトラマリン」もこの年に本格発売され(日本発売は翌1995年)、海と若さを感じるフレッシュな香りが一躍脚光を浴びますkanteikyoku-web.jpkanteikyoku-web.jp。円高による海外香水の価格低下も追い風となり、この頃から海外ブランド香水の輸入売上が急伸しましたameblo.jp。各ブランドが打ち出すライトで清潔感のある香りは「男女問わず使える」としてヒットし、日本の香水市場が“不毛”と呼ばれた状況に一石を投じますameblo.jp

1995年: サムライの登場とマリン系王道の確立

1995年は、日本の香水史において特筆すべき年です。フランスの名優アラン・ドロンがプロデュースした「サムライ (Samouraï)」が発売され、透明感あるマリン系の香りが若い男性を中心に爆発的な人気を獲得しましたkaorimania.comkaorimania.com。ターコイズブルーのボトルから想起される爽やかでクリーンな香りは、「シャワー後につけたい」「石けんのような清潔感がある」と評判を呼び、日本国内でロングセラー化していますkaorimania.comkaorimania.com。また同年、ジバンシィの「ウルトラマリン」も日本で本格展開され、こちらも幅広い年齢層に愛されるマリンノートの王道となりましたkanteikyoku-web.jpkanteikyoku-web.jp。ウルトラマリンは海を思わせるウォータリーフルーツの爽快な香りで、女性ファンも多く、夏の定番として定着しますkanteikyoku-web.jpkanteikyoku-web.jp。さらにこの年、ジャンポール・ゴルチエの「ル・マル」などバニラやトンカの甘さをもつメンズ香水(グルマン系)も欧米で登場しましたkikao.jp。ただ日本では引き続きライトで爽やかな香りが主流であり、マリン系・シトラス系の香調がこの年の男性用フレグランス市場を牽引しました。

1996年: アクア系トレンドと国産ユニセックス香水

1996年、アルマーニから発売された「アクア・ディ・ジオ」は地中海を思わせるアクアティック・シトラスの香りで世界的人気を博し、日本でも爽やかな定番メンズ香水の仲間入りをしましたbusinessweekly.com.tw。同じくこの頃、資生堂はユニセックス香水「ビバーチェ×2」をリリースし(’96年発売)、国内メーカーもCK Oneの成功を追う形で男女兼用フレグランス市場に参入しますameblo.jp。ビバーチェ×2は軽やかなシトラスグリーン調で、当時流行の「カップルで一緒に纏う香り」を意識したものでしたameblo.jp。一方海外では、ティエリー・ミュグレーの「エンジェルメン (A*Men)」が登場し、チョコレートやキャラメルを想起させるグルマン系メンズ香水として話題になりますkikao.jp。ただ日本の大衆市場では甘い重厚な香りよりも清潔感ある香りが好まれており、引き続き柑橘系やマリン系が主流でしたwwdjapan.com。1996年は輸入ブランドの多様化により選択肢が広がりつつも、日本人男性の嗜好は一貫して「爽やかで嫌味のない香り」に向かっていたことがうかがえます。

1997年: 個性派登場も定番志向は健在

1997年前後になると、市場には様々な香りが出揃い始めました。ディオールからはウッディ・マリンの「デューン プールオム」(1997年)が発売され、自然志向の落ち着いた香りとして一部愛好者に迎えられました。また日本では、俳優やミュージシャンと香水のタイアップが見られるようになり、有名人が愛用する香りが若者の間でブームになる現象も起きます。例えば木村拓哉さんが香取慎吾さんへ香水をプレゼントしたエピソードなどが雑誌で紹介され、その銘柄が売り切れるといった話題もありました(香取慎吾さん自身はウルトラマリンを愛用)kanteikyoku-web.jp。一方、王道の人気香水は引き続き健在で、ジバンシィのウルトラマリンやカルバン・クラインのCK Oneは依然若者の定番として支持されていますkanteikyoku-web.jp。この年には他にもボッテガヴェネタの「プールオム」やグッチの「エンヴィ フォーメン」など個性的な香りも登場しましたが、総じて日本人男性の多くは奇をてらわない爽やか路線の香りを好み、流行にも大きな変化は見られませんでした。

1998年: 甘さと爽やかさのせめぎ合い

1998年、ブルガリが発売した異色作「ブルガリ ブラック」は日本でも静かなブームとなります。ブラックティーとラバーの香りというユニークなスモーキー・バニラ香は前衛的でしたが、男女問わず使えるユニセックス香水として一部で人気を博し、都会的で個性を演出したい層に支持されました(後年のランキングでも上位)brandkousui.com。他方、ヴェルサーチの「ブルージーンズ」(1994年発売)が低価格も相まって日本の大学生や高校生男子の間で流行し続け、甘くパウダリーな中にも爽快感のあるその香りが“手頃なおしゃれ香水”として定着しますbrandkousui.com。また、日本のティーン誌やファッション誌では「女の子ウケする香水」として爽やかなマリン・シトラス系が数多く紹介されました。具体的には「ライトブルー プールオム」(ドルチェ&ガッバーナ)や「スカルプチャーオム」(ニコス)などが雑誌の香水特集で取り上げられ、夏場を中心に売れ行きを伸ばしていますbrandkousui.combrandkousui.com。1998年当時、日本市場では甘さと爽やかさのバランスが重要視されており、過度に重い香りよりもフレッシュで程よく甘い香調の人気が高い傾向が続きました。

1999年: オールマイティーな香りへの回帰

1999年、シャネルは新作「アリュール オム」を発売しました。複数の香調をバランス良く統合したアリュール オムは、シトラスの爽快さと東洋的なバニラの温もりを併せ持つオールマイティーな香りとして注目されます。日本でも「オンにもオフにも使える洗練フレグランス」として30代男性を中心に受け入れられ、翌2000年代にかけてビジネスマンの愛用品として定着しました。またこの頃、日本の香水市場は一時的なブームから安定期に移行します。円高で輸入香水が安価になったこともあり、ウルトラマリンやCK One、サムライといった定番商品がドラッグストアやディスカウント店でベストセラー常連となりましたameblo.jpbrandkousui.com。一方で資生堂など国内メーカーはフレグランスから一時撤退気味となり、市場は外資ブランドがリードする構図が明確になります。1999年は次のミレニアムを前に定番志向への回帰が見られた年であり、アリュール オムのような万人受けする上質な香りが好評を博したのもその表れでした。

2000年: ミレニアムと香水氷河期の訪れ

2000年前後、日本では香水ブームが一段落し、市場はいわゆる**「香水氷河期」に入ります。平成半ば以降、結局フレグランス文化は欧米ほど根付かず、2017年には仏紙ル・モンドに「日本は香水砂漠」とまで評されましたameblo.jp。この背景には、日本人の清潔志向や公共マナー意識があり、強い香りで突出することを良しとしない風潮があったと分析されていますameblo.jp。とはいえ全く香水が使われなくなったわけではなく、むしろごく控えめな香りを纏う傾向が強まりました。たとえば資生堂は「リラックス」シリーズなど微香タイプの商品を展開し、男性も使いやすいオーデコロン(軽い香り)が売れ筋となりますameblo.jp。2000年にはまた、ブルガリの「プールオム エクストリーム」やカルバンクラインの「エタニティ フォーメン」など落ち着いたウッディ・フレッシュ系が安定した人気を保ちました。総じて、この時期は派手さよりも無難さ**が求められ、香水は自己主張ではなくマナーの範囲で楽しむ嗜みとして定着していきます。

2001年: ティーン市場の開拓とプチプラ香水

2001年前後から、日本独自のティーン向け香水市場が活気づいてきます。この年、ティーン誌『nicola』などの影響で手頃な価格のプチプラ香水が高校生に浸透しました。特にピーチやベリーの甘い香りを特徴とする香水が「女子ウケ」アイテムとして男子学生にも注目され、ボディスプレー感覚で使われるようになります。また2001年には、日本発の香水ブランド「フェアリーテイル」からペアフレグランスが発売され、友達同士やカップルでお揃いにする楽しみ方が提案されました。さらに海外では、この年からスポーツ系フレグランス(例えばラルフローレン「ポロ ブルー」2003年発売)がトレンドとなり、日本でも爽快なスポーツ香水が夏場に人気を得ますcoloria.jp。依然として香水未経験の男性も多かったものの、雑誌やショップのマーケティングにより**「初心者は柑橘系から」**といった啓蒙がなされ、若年層の裾野拡大が図られた時期と言えます。

2002年: 日本発ブランド「エンジェルハート」の衝撃

2002年6月、日本初のオリジナル香水メーカー「エンジェルハート」が誕生し、看板商品の**「エンジェルハート オードトワレ」を発売しましたja.wikipedia.org。ハート型ボトルに赤い液体というポップな見た目と、フルーティーで甘い香りが特徴のこの香水は、主に10代後半〜20代女性に爆発的にヒットします。しかし実は甘く可愛らしい香りは男性にも支持され**、特に当時人気絶頂だったギャル男系ファッションを纏う若い男性がこぞって愛用したことで知られます10plus1.jp10plus1.jp(女性向け雑誌で「彼氏に付けてほしい香りNo.1」に選ばれるなど)。エンジェルハートの成功を受け、国内他社も低価格帯フレグランス市場に注力し始めました。例えばクラシエは**「アクアシャボン」**(後の2009年)に向け準備を進め、この年は前哨として石鹸系フレグランスのテストマーケティングを行っています。2002年は、日本発の香水ブランドが若者文化と結び付いた年であり、香水がより身近でファッションの延長として楽しまれる土壌を作りました。

2003年: クリーン系フレグランスの浸透

2003年前後、日本の男性用フレグランス市場では**「清潔感」をキーワードにした香りが一層浸透していきます。制汗剤ブランド「AXE(アックス)」が日本上陸(2003年)し、ボディスプレーで香りを纏う習慣が若年男性に広がりました。AXEは挑発的な広告展開も話題を呼び、「シャワー後にデオドラント感覚で香りを楽しむ」男性が増えるきっかけとなります。一方で高級ラインでは、エルメスが地中海をイメージした「地中海の庭」を発売(2003年)し、瑞々しいフィグとウッディノートのユニセックスな香りが都会的な男性に受け入れられました。国産では資生堂が男性向けスキンケア「資生堂メン」を立ち上げ(2003年)ており、そのラインの香りも非常に淡いシトラスムスクでビジネスシーンでも嫌味のない香りとして好評でした。総じて2003年は、強烈さより柔らかく清潔な香り**が主流となり、「香り=不潔を防ぐエチケット」の延長として捉える向きが強まったといえますwwdjapan.com

2004年: 「ライオンハート」と甘爽やかな香りの二極化

2004年1月、エンジェルハート社は男性向けないしユニセックス香水**「ライオンハート」を発売しましたcosme.net。マリン&アプリコットの香りと紹介されたこのフレグランスは、柔らかい甘さと爽やかさを併せ持つ使いやすい香調で、学生から社会人まで幅広い男性に受け入れられますcoloria.jpcoloria.jp。ライオンハートは当時のプチプラ香水ブームを象徴する一本であり、ドン・キホーテなど量販店で手軽に購入できることも普及を後押ししましたkaorimania.comkaorimania.com。一方、高価格帯では同年にアルマーニの「アルマーニ コード」(旧名ブラックコード)が登場し、こちらはタバコリーフやトンカビーンズによる官能的な甘さで大人の男性を中心に人気を博します。結果的に2004年の市場は、手頃で爽やかな甘さの国産香水と洗練された甘さを持つ輸入香水がそれぞれ支持を集める二極化の様相を呈しました。なお、この頃から「メンズ香水=女性受け」というマーケティング**が活発化し、「女性が好きな男性の香りランキング」などが雑誌で組まれるようになったのも特筆すべき動向です。

2005年: ディオールオムの衝撃とメトロセクシャル旋風

2005年、パルファン・クリスチャン・ディオールが放った「ディオール オム」は、それまでの男性香水像を覆すパウダリーでエレガントな一作でした。アイリスの甘く柔らかな香調を纏ったこの香りは「男性が化粧品の香りをまとうよう」とも評され、賛否を呼びつつも都会の若い男性に新鮮な驚きを与えましたfragrance.co.jp。同年頃、日本では“メトロセクシャル”という言葉が流行し、都会的で身だしなみに投資を惜しまない男性像がメディアに登場しますfragrance.co.jp。このメトロセクシャル旋風に乗って、男性用の香り付き美容製品が各社から発売されました。例えばポール・スミスの「エクストリーム」や、国内ブランドからもスパやサロン発のメンズアロマ製品が人気となります。調査によれば、若者だけでなく経済的余裕のある中高年男性も香水に関心を寄せ始めたのがこの時期でありfragrance.co.jp、香水専門店では50代男性が自ら香りを選ぶ姿も見られるようになりました。2005年は、男性の美意識改革とともに香水がグルーミングの一環として認知された年であり、ディオール オムのような新機軸の香りもその流れに乗って一定の支持を得ました。

2006年: 新旧名香の併存と香水ランキングの公開

2006年前後、日本の香水情報サイトやショップが過去の売れ筋ランキングを公開し始め、どんな香りが人気なのかが可視化されるようになりましたbrandkousui.com。この年の年間メンズ香水ランキングを見ると、1位ブルガリ プールオム、2位ヴェルサーチ ブルージーンズ、3位カルバン・クライン CK One、4位ジバンシィ ウルトラマリン、5位アランドロン サムライ、と90年代からの定番が上位を独占していますbrandkousui.combrandkousui.com。一方で下位にはディオール「ファーレンハイト」やシャネル「エゴイスト プラチナム」など往年の名香も食い込み、クラシック復権の兆しも伺えました。これらのデータ公開により、一般ユーザーも**「今売れている香水」を把握しやすくなり、購買行動に影響を与えています。なお2006年には、エルメス「テール ドゥ エルメス」という後年名香と称される香りが発売されました。グレープフルーツとベチバー(土の香り)を基調とした大地を思わせるウッディノートで、日本でも香水好きを中心に静かなブームとなります。総じてこの年はランキングで見る定番人気の安定**と、新作名香の台頭が同時に起きた年でした。

2007年: ソープ系フレグランスと香りの多様化

2007年頃、「石けんの香り」のフレグランスが男女問わず支持を集め始めます。日本発のアクアシャボンシリーズ(正式発売2009年に先駆けプロモーション開始)は、せっけんやシャンプーのような清潔な香りを前面に打ち出し、「香水っぽくない香水」として若者層を中心にヒットしました。男子高校生〜大学生の間でも、体育の後や部活帰りにシュッとひと吹きするボディミスト感覚で愛用する人が増え、「女子ウケする=せっけん系の香り」という図式が成立しますcoloria.jpcoloria.jp。またこの年、ドルチェ&ガッバーナの**「ライトブルー プールオム」(柑橘とシダーウッドの爽快な香り)が発売され、日本でも夏向けメンズ香水の新定番として迎えられましたcoloria.jp。他にもコーチ「コーチ マン」(2007年)などフレッシュなアクアティック系が次々登場し、市場の香りの選択肢はますます多様化します。一方で、「香水はTPOで使い分けるもの」という香水上級者も現れ、ビジネス・デート・休日と香りを変える楽しみ方が雑誌等で紹介されましたfromcocoro.com。2007年は、清潔感ブームとフレグランス多様化**が進んだ年として位置付けられます。

2008年: クラシックとモダンの融合

2008年、パコラバンヌの「ワンミリオン」が欧米で発売され、その濃厚な甘さとゴールドのボトルが話題となりました。日本でもクラブ好きの若者を中心に「夜遊びに纏う香り」として注目されますが、一般には「少し香りが強すぎる」という声もあり、受け止め方が分かれる香水でした。むしろ日本市場では、この年シャネルが発表した限定復刻版「アンテウス」や、ディオールの「オーソバージュ」など往年の名香リバイバルに注目が集まります。高度成長期に青春時代を過ごした50代以上の男性が懐かしんで購入するケースが増え、香水専門店はそうした顧客に向けて往年の名作を積極的に提案しましたfragrance.co.jpfragrance.co.jp。一方、20代〜30代にはブルガリ「プールオム ソワール」(2006年発売)のような落ち着いた紅茶の香りが人気となり、ビジネスシーンで活躍する男性がさりげなく纏うエレガントな香りとして支持されました。2008年はクラシック回帰と最新トレンドの交錯が見られ、日本人男性の香りの好みが二極化・多様化していることを印象づけた年でした。

2009年: 資生堂「ZEN for MEN」と国産復権の兆し

2009年、資生堂は世界的人気となっていた香水ライン「ZEN(禅)」の男性版**「ZEN for MEN」をついに日本国内導入しましたcorp.shiseido.com。スパイシーウッディに柑橘とキンカンのフルーティーさを加えたこの香りは、妥協のない官能性と現代的な洗練を追求した一品として話題になりますfsassessements.com。長らく海外市場向けが中心だった資生堂香水の日本再投入は、「香水砂漠」と言われた国内市場への再チャレンジとも受け止められましたameblo.jp。同年、三宅一生からも新メンズ香水「ロードゥ イッセイ プールオム インテンス」が発売され、こちらはお香やスモーキーウッドを思わせる和のテイストが中堅男性に支持されます。さらに2009年は香り付き柔軟剤ブームが勃興した年でもあり、ダウニーなど海外製柔軟剤の強い香りが若者の間で流行しましたfragrance.co.jpfragrance.co.jp。この影響で「香水代わりに柔軟剤の香りを纏う」という新しいスタイルも登場。総じて2009年は、国内ブランドの香水復権の兆しと生活雑貨への香り拡張**が同時進行した年であり、日本人と香りの付き合い方が変化し始めたターニングポイントでした。

2010年: ブルー系フレグランスの新定番誕生

2010年、シャネルが放った「ブルー ドゥ シャネル」は、グレープフルーツやお香、シダーが織りなすモダンでミステリアスなフゼア香で、全世界でベストセラーとなりました。日本においても「爽やかだが深みもある香り」としてビジネスマンから学生まで幅広い層に受け入れられ、新たな定番メンズ香水の地位を確立します。一方、2010年の年間売上ランキングを見ると、トップ10の多くを90年代〜2000年代初頭に発売された香りが占めていましたbrandkousui.combrandkousui.com。例えばブルガリ プールオム、ヴェルサーチ ブルージーンズ、CK One、ジバンシィ ウルトラマリン、サムライなどが依然上位にランクインしbrandkousui.com、日本人の香りの好みの保守性が垣間見えます。この年はまた、香り付きボディシートやマスクスプレーなどの派生商品も登場し始め、香水以外で香りを楽しむ動きも見られましたjstage.jst.go.jp。2010年は、ブルー ドゥ シャネルに代表される新世代の香りが仲間入りする一方で、ロングセラーの強さが際立った年と言えます。

2011年: “香水離れ”報道と隠れ香りブーム

2011年前後、一部メディアで「若者の香水離れ」が話題に上りました。東日本大震災(2011年)の影響で派手な装いや強い香りを自粛する空気も漂い、実際この頃香水市場は一時的に縮小しています。しかしその裏で、練り香水やヘアフレグランスといった穏やかに香らせるアイテムが静かなブームとなりましたfragrance.co.jpfragrance.co.jp。たとえばロクシタンや資生堂から発売された練り香水は「控えめで上品」と好評で、オフィスでも使いやすい香りとして働く女性だけでなく男性ユーザーも獲得します。ブランド別では、**ディオール「オー ソバージュ」や資生堂「モア・ザン・ワーズ」**といったクラシカルなシトラスコロンが再評価され、父の日ギフト等で売上を伸ばしました。さらに2011年は、英国王室の結婚式など世界的華事があり、紳士的な香りへの注目も高まります。ジョンマスターオーガニックのシトラススプレーを愛用する男性芸能人がいたりと、自然派フレグランスが男性誌に取り上げられたのもこの年でした。総じて、香水ボトルを振りまく派手さは影を潜めたものの、穏やかな香りを密かに楽しむという新たな潮流が芽生えた年と言えるでしょう。

2012年: niche香水と和素材への関心

2012年頃から、インターネットを通じてニiche(ニッチ)フレグランス=個性的な香水への関心が高まってきます。従来日本ではあまり手に入らなかった高級芸術的香水ブランド(例えばペンハリガン、セルジュ・ルタンスなど)の香りが並行輸入やPOPUP店舗で紹介され始め、香水愛好家の間で話題となりました。また、この年資生堂は「ZEN ホワイトヒートエディション」男女ペア香水を限定発売し、同時に和素材を活かした香り(ユズやサクラなど)への注力も発表しますcorp.shiseido.comcosme.net。海外でもディプティックからお米の香りのフレグランスが登場するなどkikao.jp和の素材・日本的情緒が香りのテーマとして脚光を浴び始めました。一般市場では、引き続き**「清潔な石けん系」が安定人気で、柔軟剤の香りブームも後押ししてフィッツコーポレーションの「ランドリン」などルームフレグランス系ブランドが台頭します。2012年の男性用香水市場は大きな変動こそないものの、裏では香りの多様化と高級志向**という新たな動きが着実に進行していたと言えます。

2013年: スマートな男性像と香り

2013年前後、男性ファッション誌が「女が惚れる男の香り」特集を組むなど、香りと男性像の関係性が語られる機会が増えました。ここで取り上げられるのは決まって爽やかで知的な印象を与える香りであり、具体的にはブルガリ「プールオム」やシャネル「プラチナム エゴイスト」が鉄板の推薦として挙げられましたfromcocoro.comkaori.air-marketing.co.jp。プラチナム エゴイストは発売20年を経てもなお「30代男性に似合う色気の香り」と支持され続けkaori.air-marketing.co.jpkaori.air-marketing.co.jp、同様に90年代香水であるヴェルサーチ「ブルージーンズ」も「いつまでも新鮮」と再評価されていますbrandkousui.com。この年、グッチは「グッチ ギルティ ブラック プールオム」を発売し、甘く妖艶な香りでナイトシーン向けにアピールしましたfromcocoro.com。しかし日本では売上上位には至らず、依然として場を問わないスマートな香り(柑橘・グリーン・ウッディ調)が選好されています。2013年はまた、「香水男子」という言葉がネット上で使われ始め、香水好きな男性コミュニティが形成された年でもあります。こうした層は海外通販で香水を購入しブログやSNSで情報交換するなど、香りの楽しみ方がデジタルに広がった点も特筆されます。

2014年: 甘辛フレグランスと大人の余裕

2014年、パコラバンヌの「インヴィクタス」やヴィクター&ロルフの「スパイスボム」など、スパイシーさと甘さを併せ持つ男性香水が相次いで日本導入されました。インヴィクタスはグレープフルーツとアンバーのコントラストが特徴で「勝利の香り」の触れ込み通りスポーツマン的爽快感が好評を博し、一方スパイスボムはタバコとスパイスの重厚さで香水マニアを唸らせました。日本の一般市場ではこれらニッチ寄りの香りはまだ主流とは言えないものの、**「たまには個性派で周囲と差をつけたい」**という男性が選ぶケースも増えてきました。またこの年、シャネルは「アリュール オム スポーツ オー エクストレム」を発売し、爽やかながら深みのある香りで大人の男性に余裕を演出するフレグランスとして人気を集めますcosme-de.net。実際2014年の売上ランキングでは、爽快なライトブルー(D&G)やサムライ ライトと並んでこの「アリュール オム スポーツ」も上位に入っておりcosme-de.netcosme-de.net、スポーティーとエレガントを両立した香りが求められていることが分かります。総じて2014年は、甘さ・辛さ・爽やかさのバランスが重視され、「大人の余裕」を感じさせる香りが評価された年でした。

2015年: ディオール「ソヴァージュ」の旋風と“おじ香水”回帰

2015年、ディオールが発売した「ソヴァージュ(Sauvage)」は瞬く間に世界的ベストセラーとなり、日本でも大きな話題となりました。アンブロクサンを主体にしたシャープで清潔感のある香りは「今風の野性」を表現し、若い世代から中年層まで幅広い男性を魅了していますbusinessweekly.com.tw。発売直後から品切れ店が続出し、香水専門店では「ソヴァージュありますか?」と問い合わせが殺到する一大旋風となりました。興味深いことに、この頃Z世代の若者の間で1990年代の香水リバイバルも起きていますbusinessweekly.com.twbusinessweekly.com.tw。例えばアランドロンの「サムライ」やアルマーニの「アクア ディ ジオ」といった往年のヒット作が「逆に新鮮」「お父さんを思い出す」といったノスタルジー込みで人気復活し、“ちょい古香水”をあえて纏うのがクールだという風潮も一部にありましたbusinessweekly.com.tw。この背景にはSNSでの情報拡散や古着ブームと通じるレトロ志向があるようです。2015年はソヴァージュのような新定番の誕生と、懐かしの香りへの回帰現象という両極の動きが見られ、日本の香水文化が一段と豊かになった年でした。

2016年: マスキュリンとジェンダーレスの共存

2016年、日本のメンズ香水市場は男らしさの追求ジェンダーレスな感覚がせめぎ合う状況でした。一方ではプラダの「ルナロッサ カーボン」やヴァレンティノの「ウモ」など、伝統的な男性像を意識した甘く官能的な香りが登場し、デートや夜のシーン向けに支持されます。他方、カルバンクラインがCK Oneの流れを汲む全く新しいユニセックス香水「CK All」を発売(2017年)するとその前評判が2016年から高まり、ジェンダーレス時代の到来を象徴しました。日本ではこの年、資生堂が男性メイクブランド「ウーノ」のCMで香り付きヘアワックスをアピールするなど、香りをファッションの延長としてまとうライフスタイル提案が増えます。また2016年はドラマや映画で香水が小道具として使われ話題になるケースもありました。例えばあるドラマで主人公の男性が「プラダを纏う男」としてプラダの香水を愛用する設定が登場し、その銘柄に問い合わせが殺到する現象もありました。全体として、2016年は従来のマスキュリン路線新しいボーダーレスな香りの楽しみ方が共存し、男性たちが自分らしい香りを模索し始めた時期といえるでしょう。

2017年: ニュークラシックと香水専門店の台頭

2017年、メゾン マルジェラのフレグランスコレクション「レプリカ」が日本で展開され、「ジャズクラブ」や「アットザバーバー」といった情景を切り取った香りが支持を集めました。ウイスキーやタバコ、理髪店の匂いといったマニアックな香調ながら、「大人の男の余裕を感じる」と香水ファンの間で人気となります。同年、英国発の香水専門店「NOSE SHOP」が東京にオープンし、これまで手に入りにくかったニiche香水を試せる場として話題になりましたwwdjapan.comwwdjapan.com。このように個性的な海外ブランド香水が手に届くようになったことで、香りにこだわる層は一気に裾野を広げます。一方で、一般市場に目を向けると、**ブルガリ「アクア プールオム マリン」ドルチェ&ガッバーナ「ライトブルー プールオム」**といった定番マリン系が相変わらず根強い人気を誇っていましたcoloria.jp。2017年は、ル・モンド紙の指摘した「香水砂漠」状態から脱却すべく、香りの楽しみ方が多様化・専門化し始めた年であり、新旧・王道と前衛が同時に花開く時期となりました。

2018年: クリーンな男らしさと自然志向

2018年、日本の男性用フレグランスはクリーンな男らしさがキーワードとなります。定番人気のブルガリ「プールオム」はもとより、この年発売されたイヴ・サンローラン「Y(イグレック) オードパルファム」も、爽やかなジンジャーとセージに樹木の深みを加えた香りで「清潔感の中に芯の強さ」を表現しヒットしました。またナチュラル志向の高まりも顕著で、オーガニックコスメブランドから男性向けアロマミストが登場したり、柑橘系精油をブレンドしたパーソナルフレグランスを調合するサービスが人気を博したりしましたwwdjapan.com。この頃、日本人男性の85%以上が何らかのフレグランス製品を使用しているとの調査結果も発表されjstage.jst.go.jp、「香りを纏うこと」はもはや特別なことではなくなっていることが分かります。さらに2018年は、トムフォードの「プライベートブレンド」コレクションが上陸し、「ファッキングファビュラス」や「トスカーナレザー」といった超高級香水を買い求める富裕層男性も現れましたfromcocoro.com。総じて、2018年は清潔で好印象な香りが主流を占めつつも、感度の高い層では自然由来や高級ニicheなど多彩な香りに手を伸ばすようになった年でした。

2019年: 昭和レトロ香水の再評価とミレニアル世代の香り観

平成最後の年となる2019年、昭和時代の香水がひそかなブームとなりました。資生堂が70年代に発売していた「ブラバス」「タクティクス」などのオールド香水を復刻して期間限定販売する催しがあり、40〜60代男性が懐かしさで購入するだけでなく、20代の香水マニアが「レトロなボトルが新鮮」とコレクションする姿も見られました。これは2010年代後半のヴィンテージブームやシティポップ再評価とシンクロする現象であり、香りの世界でもノスタルジーが一つの付加価値になったことを示していますbusinessweekly.com.tw。一方、ミレニアル世代(20〜30代)は香りを自己表現のツールと捉える傾向が強まり、「自分だけのお気に入り」を求めて調香イベントに参加したり、香水を数種類レイヤードして付けるテクニックを楽しんだりしましたfragrance.co.jpfragrance.co.jp。2019年はまた、各ブランドがこぞって平成を振り返る香水特集を組み、雑誌には「平成メンズ香水30年史」なる記事も掲載されました。その総括として挙げられたのは「日本では結局フローラル・シトラス・シャボン系が主流で、フレグランス文化は欧米ほど爆発しなかった」という分析でしたameblo.jpwwdjapan.com。こうした総括が出るほど、2019年は一つの区切りとして日本人と香りの関係を見直すムードがあったと言えるでしょう。

2020年: パンデミック下での香りの新潮流

2020年、新型コロナウイルスの世界的流行により、人々のライフスタイルは一変しました。外出自粛やマスク常用が常態化する中、香水業界も影響を受け、日本では「香水よりも室内やマスク用フレグランス」に注目が集まりますjstage.jst.go.jp。例えばマスクスプレー(布マスクにシュッとするアロマスプレー)やルームディフューザーの売上が急伸し、香水各社もこぞってリネンフレグランスや空間用アロマを発売しましたjstage.jst.go.jp。もっとも、元々ライトな香り志向の日本人は「マスクで他人の匂いが気にならなくなった」「香水を付けなくなった」という声も多くdesignstoriesinc.com、特に香水初心者層の使用頻度は減少します。しかしその一方で、自宅で自分のために香りを楽しむ動きが広がりましたjstage.jst.go.jp。おうち時間を豊かにするため、お気に入りの香水をルームフレグランス代わりにしたり、入浴後に纏ってリラックスしたりといった使い方がSNSで共有されます。また2020年はパンデミック下ながら新作メンズ香水も発売され、カルバンクライン「ディファイ」やジミーチュウ「アーバンヒーロー」など爽快かつ芯のある香りが好評を得ました。総じて、2020年は香りの楽しみ方がパブリックからプライベートへシフトした年であり、香水の価値が「自分を癒やすもの」として再認識された年でもありました。

2021年: リラックス志向と和の香りブーム

2021年、コロナ禍が長引く中で、日本ではリラックス効果のある香りが大きなトレンドとなりましたkikao.jp。ラベンダーやティーツリーといったハーブ系の香りが支持され、特にラベンダーは安眠効果も期待できることから男性にも人気が拡大しますkikao.jpkikao.jp。各ブランドは競ってラベンダー香るフレグランスを投入し、たとえばルイ・ヴィトン「イマジナシオン」(ベルガモットと中国茶、ラベンダーを融合)やブルガリ「アルミニウム トニック」(ラベンダーが爽快に香る限定版)などが発売されました。さらに2021年は和の香りブームも本格化します。抹茶やお米など日本独自の素材を使った香りが海外ブランドから相次ぎ登場し(抹茶の香りの香水が「サボン」や「マルジェラ」から発売)wwdjapan.com、日本国内でも金木犀の香りが爆発的ヒットを記録しました。特にフィッツコーポレーションが発売した「金木犀の香水」はSNSで話題沸騰し、一時入手困難になるほどの人気でした。「柔軟剤やボディミストでも金木犀の香りが欲しい」という要望が生まれたほどで、これを機に各社から和テイストの限定香水が次々と企画されます。2021年は、ストレス社会で香りに癒しを求める傾向が一段と強まり、日本人が古来親しんだ和の香りが現代に蘇った年でした。

2022年: クリーンフレグランス回帰とパーソナライズの台頭

2022年、日本のフレグランス市場はクリーン系への回帰が顕著になります。長引くマスク生活から解放されつつあったものの、やはり強い香りより清潔感のある香りが好まれる傾向は変わらず、王道のシトラスや石鹸系が再評価されましたfits-japan.com。フィッツジャパンの調査によれば、好まれる香調トップは「せっけん・シトラス・フローラル」であり、日本人に馴染み深い親しみやすい香りが存在感を増しているといいますfits-japan.com。またこの年、Z世代を中心にパーソナライズ香水が注目を集めました。オンライン診断や店舗カウンセリングで好みや性格に合わせた香りを調合してくれるサービスが登場し、自分だけの“推し香水”をSNSで披露する若者が増えています。さらに環境意識の高まりから、詰め替え可能な香水ボトルやサステナブル素材の香料を使ったクリーンフレグランス(成分的なクリーンさを追求した香水)も支持されました。シャネルやディオールも環境配慮を謳ったコレクションを発表し、香り選びにおいてエシカルな視点が加わったのもこの年の特徴です。2022年は、日本人本来の好みに立ち返りつつ、個性とサステナビリティも尊重するという新時代の香りトレンドが形成されたと言えるでしょう。

2023年: 香水市場の復興とトレンドの細分化

2023年、コロナ禍が落ち着きを見せるとともに、香水市場も再び活気を取り戻してきました。マスク着用緩和により外出時に香水を楽しむ人が増加し、百貨店のフレグランス売場には若い男性客の姿が目立つようになりますdesignstoriesinc.com。今年は特にフローラル系メンズ香水のリバイバルがトレンドとして浮上しましたkikao.jp。長らく女性的と敬遠されがちだった花の香りですが、清潔感と上品さを兼ね備えたフローラルは改めて若い世代に新鮮に映り、ローズやジャスミンを主役に据えたユニセックス香水が人気ですkikao.jp。同時に、パンデミック中に登場したティー系やライス系の香りも定着しつつあり、お茶の香り(紅茶・緑茶)は「日本人にも馴染みやすくリラックスできる」としてヒット商品が生まれていますwwdjapan.com。一方で、引き続き石けん・柑橘系の王道も根強い支持がありwwdjapan.com、トレンドが非常に細分化した状況です。香水専門誌の分析では「日本のフレグランス文化はいよいよ百花繚乱。万人向けクリーン系から香りマニア垂涎のニッチまで、それぞれの楽しみ方が成熟している」と評されています。2023年は、市場の復興と多様化の極みとも言える年となりました。

2024年: AI時代の香り提案と新5大ノート

2024年になると、AI技術を使った香りの提案サービスが話題になりました。大手香水メーカーがウェブ上でAIフレグランス診断を開始し、いくつかの質問に答えるだけで自分に合う香水をレコメンドしてくれるというものです。若年層を中心にこれが受け、「AIお墨付きの香り」として購入に結びつくケースも増えています。またこの年、「新・香りの5大ノート」として日本フレグランス協会がグルマン、ライス、フローラル、ラベンダー、シトラスを挙げましたkikao.jpkikao.jp。すなわち近年のトレンドを象徴する香りの系統として、食べたくなる甘さ(グルマン)kikao.jpお米の柔らかさ(ライス)kikao.jp華やかな花の香り(フローラル)kikao.jp癒しのラベンダーkikao.jp爽快な柑橘(シトラス)kikao.jpが注目されています。日本でもこの潮流に沿った商品開発が進み、和菓子をイメージしたグルマン香水や、国産酒米を発酵させたエキスを含む香水などが登場しました。さらに環境配慮としてアルコールフリーの水性香水が人気になるなど、技術革新の動きもあります。2024年は、テクノロジーと香りの融合およびトレンドノートの明確化が進んだ年であり、日本の香水文化が新章に突入しつつあることを感じさせました。

2025年: 個性と調和 – フレグランス新時代へ

2025年、日本の男性用フレグランスは**「パーソナルな香り」と「調和のとれた香り」という二つのキーワードで語られます。本年のトレンドとして注目される香りは5つありますkikao.jpkikao.jp。一つ目はグルマン系で、バニラやカラメルの甘さが幸福感をもたらす香り(秋冬向け)kikao.jp。二つ目はライス系**、お米由来のほんのり甘くピュアな香りで、日本ブランドも参入する新領域ですkikao.jp。三つ目はフローラル系の復権で、ローズやミュゲなど華やかで上品な香りが男女問わず人気を集めていますkikao.jp。四つ目はラベンダーのさらなる台頭で、爽やかさとリラックス効果を併せ持つ香りとして支持が拡大kikao.jp。五つ目はシトラス系の永遠の定番で、ユニセックスに使えるクリーンな香りが引き続き好まれていますkikao.jp。2025年現在、香りはもはやTPOだけでなく自分の気分や個性を表現する手段として完全に市民権を得ましたkikao.jp。同時に職場や公共の場では調和を乱さないエチケットも重んじられ、強すぎず心地よい香りが支持される傾向にありますwwdjapan.com。30年以上にわたるトレンドを振り返ると、日本市場は常に「清潔感」「爽やかさ」を基調としつつ、その中で少しずつ冒険を取り入れてきたことが分かりますwwdjapan.com。2025年、男性たちは過去の名香から最新トレンドまで自在に香りを纏い、自らのスタイルに合わせて香水をアップデートする成熟期を迎えていると言えるでしょう。

まとめ・傾向分析

1990年から2025年までの日本における男性用フレグランスの歩みを見ると、全体を貫く一貫性と時代ごとの揺らぎの両方が浮かび上がります。日本人男性に広く好まれる基調は一貫して「清潔感」「爽やかさ」「ほのかな甘さ」であり、90年代のユニセックスシトラスブームから現在に至るまでシトラス・マリン・ソープ系の人気は不動ですwwdjapan.com。これは日本独自の文化的背景(他者への配慮や清潔志向)によるもので、重厚で強い香りが主流化しにくかった要因と考えられますameblo.jp。一方で時代のムードやファッションの変化に応じて、香りのトレンドには周期的な揺らぎが見られました。90年代半ばにはバブル崩壊後の癒しブームでライト&リラックス調へ振れameblo.jp、2000年代前半はメトロセクシャル傾向で美容的な香りやプチプラ香水が台頭fragrance.co.jpkaorimania.com。2010年代はコロナ禍前まで甘さや深みを持つ香りも受け入れられましたが、それでも主流はフレッシュ系であり続けwwdjapan.com、パンデミックを経て再びクリーン志向が強まっていますfits-japan.com。また、メディアや有名人の影響も日本市場では大きく、アイドルや俳優が愛用する香水が爆発的に売れる現象が何度も起きましたkanteikyoku-web.jp。マーケティング面では、カップル向け訴求や「女子ウケ」など日本ならではの切り口で香水がプロモーションされてきた点も特徴的です。総括すると、日本の男性用フレグランス市場は決して欧米並みに巨大化はしなかったものの、その分清潔で好感度の高い香り文化が育まれました。今日では香水は男性にとっても身だしなみの一部となり、世代を超えて楽しめる様々な香りが揃っています。今後も日本ならではの繊細な香りの嗜み方が維持されつつ、新しい素材や技術による革新が続いていくでしょう。


参考文献・出典(一部):

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